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RFアナログエンジニア ブログ

集積回路の発展 ~ その3. MMIC

MMICは、半導体基板内に、多数のトランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサ、線路を高度な設計技術、加工技術、により

高機能回路を集積製作される。

大量生産、低コスト、超小型が可能であるが、二端子素子による立体回路のミリ波レーダの開発に従事していた筆者にはミリ波帯で実用することは想像できなかった。

筆者は1990年代頃からミリ波帯利用の拡大機運が高まり、低コスト大量生産に必須なMMICを開発する会社に移籍し、開発に従事した。

GaAs化合物半導体に発振器、増幅器、ミキサなど集積し、60GHz帯のシステムとして評価実証しミリ波MMICの有用性を確認できた。

視察した半導体製造現場はミリサイズのMMIC電子チップに比べ、大地の振動が少ない地域に立地する強大な半導体製造工場の超微細加工設備、

超クリーン環境、超精密計測設備の塊であった。

工場内部の微細加工の電子挿画などの高度なミリ波半導体製造工場、ミリ波ネットワークアナライザ、ミリ波プローブ用いたMMIC評価システムなど高度技術を見てミリ波実用化を実感したことを覚えている。

以来、車載用のミリ波MMIC搭載ミリ波レーダが量産され実用発展している。

集積回路の発展 ~ その2. MIC

筆者は、1.7GHz帯のIF回路、増幅回路設計製作を行った。

MICは、マイクロ波帯のフィルタ、ハイブリッド、スプリッタ、整合回路などを導体パターンで作成する。

その線路は主に製造性に優れたマイクロストリップラインを用いた。

マイクロストリップラインは接地導体面とストリップ導体で構成されるが、一方が解放面になるので、電磁界が他方に放射される。

MICは、金属ケースに収納されるが、完ぺきな遮蔽は困難だ。

W40G方式では送受信部盤内に同一周波数(1.7GHz)の中間周波数ヘテロダイン方式であったため、送受信干渉が問題になり、

ケースを導電接着剤、導電パッキン、電波吸収体などで遮蔽特性を向上させ解決した。

集積回路の発展 ~ その1. HIC

筆者は、1962年から今日までマイクロ波、ミリ波帯の集積化回路の開発とその発展を見てきた。

無線装置の小型、軽量、低コスト、高信頼性化の要求で1965年頃から、絶縁基板にトランジスタなどの基本素子を搭載し、小型化を目指し、1GHz以下のマイクロ波帯のハイブリッド集積回路(HIC)の開発をはじめた。

これは無調整で多数の集中定数素子を基板に搭載し小型化を図ったものだ。同一寸法のプリント基板を複数重ね、キャラメル菓子状の立体的に高集積化したHICもあった。

HICは主に、70,MHz140MHzのIF回路、変復調回路に用いられた。

次に、1GHz以上では高周波特性の優れたテフロン、ガラスファイバープリント基板や薄膜抵抗性金属、銅、金の薄膜を蒸着、メッキにより積層形成したセラミック基板にフォトエッチングにより、分布定数線路、部品搭載用パターンを予め作り、その後チップコンデンサなどを導電接着で搭載したマイクロ波集積回路(MIC)の設計製作を行った。

MICの基板は、セラミック以外に高周波特性の優れたテフロンにガラス繊維を含め、両面に銅の薄膜を貼りつけた基板も使用した。

現在の新規開発用マイクロ波、ミリ波送受信機の製作

筆者が48~68年前から行ったマイクロ波、ミリ波送受信機は、トランジスタ、ダイオード等の基本機能の素子をパッケージに封入したRF部品を、要求仕様に合った設計を行い、製作していた。

別に寿命保証、信頼性保証が要求される仕様の無線機は、高出力トランジスタ、逓倍用バラクタには加速寿命試験をクリアし、承認を得なければならず、膨大な人的、時間的工数でコスト高になった。

近年のマイクロ波帯携帯電話用、ミリ波自動車レーダ用等の量産型無線機の普及は、必然的にマイクロ波帯、ミリ波帯集積回路化が進展した。

軍用無線機用も含め、多種、低コストのデバイスの入手が容易になった。

筆者は、2013年前頃、急遽研究機関からの研究用衛星マイクロ波無線システムのRF部設計担当になった。しかし、限られた予算、短期での設計、製作の可能性が危ぶまれた。

設計ポイントは、①システムのバンド幅350kHz、➁受信機の高ダイナミックレンジであった。

①は高度周波数安定度の基準発振器に同期したマイクロ波発振器、マイクロ波帯、IF帯の各種BPF、➁高性能IF自動利得増幅器 が必須であった。

①のデバイスはマイクロ波帯基本設計から各デバイスの仕様を策定し、株式会社アムテックスの担当殿に世界中の仕様に適合するデバイスを探してもらった。幸いすべての仕様に適合するデバイスが入手できた。特に広帯域高機能AGCAMPのMMICチップ、140MHz帯SAWBPFは設計上大変助かった。

新規に設計したのは、MMICチップ、SAWBPFを搭載したプリント基板回路とそれを収納する金属ケースのIF部ユニットであった。それ以外は全て既存のマイクロ波シンセサイザ、マイクロ波増幅器、ミキサ、BPF、減衰器、基準発振器完成品ユニットを組み合わせ製作できた。

結果、短期間に無事納入でき、マイクロ波デバイスの広さ、奥の深さに驚きました。

マイクロ波、ミリ波回路の設計ツール

筆者の1960~1970年代マイクロ波帯逓倍器、フィルタ、発振器、ミキサ等の主な設計道具は、工学書、技術資料、計算尺、機械式計算機(タイガー計算機)、スミスチャートであった。

基本素子の組み合わせの回路が理解できたが長時間の設計工数と試作、改良が必要であった。

後に科学計算ができる電卓、ネットワークアナライザのSパラメータ測定データを基にした電算機設計手法が主流になっていった。

設計時間が短時間、試作回数も少なくなり開発工数が短くなった。

集積回路の組み合わせが多くなり、小型高性能の回路設計ができた。

一方でブラックボックスの回路部品の組み合わせが多くなり、詳細な機能動作の理解が希薄になっていったように思っています。

50GHz帯簡易無線機用アンテナ

低利得用ホーンアンテナ、中利得用カセグレンアンテナ、高利得用カセグレンアンテナを標準に設計した。

カセグレンアンテナは直径30cm、40cmの2種類、三種類ともレドーム付きであった。

納入実績はほとんど直径30cmのカセグレンアンテナ(利得40dB)であった。

ミリ波薄膜偏波変換器

50GHz帯簡易無線装置の送受信部とアンテナ間に数十ミクロン厚の金属薄膜偏波変換器を発明し、使用した。これは、インターフェースのVバンド矩形導波管に挟み込み、水平、垂直偏波のどちらにアンテナを接続しても正常に送受信でき、バンドパスフィルタとしても働き不要波除去に役立つ。

通常は偏波に応じて送受信部導波管とアンテナ導波管の間に、直交ステップ導波管もしくは、直交ツイスト導波管、直線導波管を選び接続する。 

薄膜偏波変換器の採用により低コスト化、小型化ができた

最初の広帯域高速伝送、簡易免許、汎用、実用ミリ波無線機

昭和の高度成長期には情報通信ネットワークが飛躍的に発達し、周波数有効利用の見地もあり、ケーブルの有線伝送を補完する50GHz帯簡易無線バンドが割り当てられた。広帯域無線伝送にも関わらず、免許手続き、無線従事者不要、一般的な使用目的が可能の簡易無線であるため様々な使用形態で使用された。筆者は、50GHz帯簡易無線装置送受信部の防滴屋外ユニットの設計開発を担当した。カラー画像(NTSC方式)アナログ伝送システム、高速デジタル伝送システムに共用するためFM変復調方式を採用した。また、多様な使用形態に対応し、電波干渉を避けるための垂直、水平直線偏波選択、多種アンテナの選択を可能にし、RFIF,ベースバンド回路、電源回路を収納した屋外使用が可能な防滴構造とした。

マイクロ波無線機のIFフィルタ

 無線機はフィルタの塊と言われるぐらい、高周波部の送受共用チャンネルフィルタ、中間周波部BPF、パルス応答用LPFなど各種フィルタが使われる。アナログ多重無線方式、デジタル無線方式にとってフィルタは、不要波除去、許容S/N,C/Nに影響する需要な回路である。筆者が経験した70MHz帯IFBPFは、無線機の1970年代まで可変インダクタコイル、可変コンデンサの組み合わせの多段BPFですべて個別調整であった。L、Cの素子のQが余り高くなく、狭帯域や位相平坦特性などのフィルタの実用性には問題があった。特に量産型無線機用には小型、無調整のデバイスが求められ、1980年代ごろから弾性表面波フィルタ(SAW)が実用化された。筆者は40GHz帯デジタル無線機のIFBPF(帯域幅数MHz)にSAWBPFを使用した。無線装置設計を担当した筆者には大変助かったことを覚えている。

シリーズ : マイクロ波発振器周波数安定方式 ~その2.

また、40GHz帯デジタル無線装置の許容送信周波数変動は100ppmで、4MHz変動を想定する。受信IFは、雑音抑圧の帯域制限で帯域幅1.6MHzBPFを通過させるため、相手局の送信周波数(受信周波数)変動を吸収し、受信IF周波数は常時BPFの中心周波数なければならない。そのため40GHz帯デジタル無線装置用に逓降回路、逓倍回路、位相比較回路が集積されたPLL用集積回路を使用しダブルスーパーヘテロダイン受信機の狭帯域IF回路(70MHz)に(2)の水晶発振器を基準として位相比較器、電圧制御マイクロ波発振器を組み合わせた位相同期方式(PLL)の局発を採用した。これは、ミリ波受信周波数の変動に追随するAFCとして動作するものであった。低コストの50GHz帯小型簡易無線機(後述)には(1)、(2)の方式は回路構成が複雑で高コストなため、(3)の高Q共振器付き直接発振方式を採用した。具体的には製造コスト優先で送信側が温度特性の良い誘電体共振器付きのガンダイオード25GHzFM発振器と2逓倍器を組み合わせた構成に、受信側は温度特性の良い誘電体共振器付きのガンダイオード25GHz CW発振逓倍器の構成で実用化した。ミリ波帯発振器の高安定周波数方式は、ミリ波帯周波数を分周できるICがあれば既存のPLLICと組み合わせ基準発振器に同期できるので最良と思う。分周ができなければ、逓倍方式が現実的と思われる。以上の2方式組み合わせも考えられる。発振周波数帯高Q共振器による直接発振器では、温度補償特性の誘電体共振器、筐体温度補償を組み合わせが考えられる。低Qの共振器による発振器の温度特性は一般的に負の勾配になるのでこれを補償する正の勾配の温度特性を有する高Q共振器を使用する。この方法はW40G方式では導波管インパットダイオード、ガンダイオードのミリ波発振器が開発されたがそのミリ波共振器は、金属空洞の熱膨張の小さいスーパーインバーを精密加工したもので、大変な高コストだった。

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